55歳、レンタル彼女と初デート|会ってすぐ舞い上がった僕

出会い体験記

レンタル彼女を予約した。

ここまでは前回書いた。

問題は、そのあとである。

55歳にして初めてのレンタル彼女。

しかも僕は、初対面の女性といきなり5時間のデートを予約してしまった。

今まで旅行も一人。

食事も一人で平気。

そんな僕が、写真でしか見たことのない女性と5時間。

さて、どうなる。

彼女から初めてメールが来た

予約を申し込んでしばらくすると、彼女からメールが届いた。

このブログでは彼女を、**「あーちゃん」**と呼ぶことにする。

実は、あーちゃんもレンタル彼女の活動を始めてまだ間もないという。

お互い初めてみたいなものだから、気楽に楽しい時間を過ごしましょう。

そんな感じのメッセージだった。

これは助かった。

こっちは55歳。

レンタル彼女というものが、そもそもよく分かっていない。

何を話す?

どこへ行く?

何時間くらいが普通なんだ?

正解がまったく分からない。

それなのに僕は、安心した勢いで返信してしまった。

ランチをして、そのあと水族館でも行きませんか。

そして――

「とりあえず5時間くらいでどうでしょう?」

5時間。

初対面の女性と、5時間。

しかも自分のメールを読み返すと、

質問。

質問。

また質問。

最後には自分で、

「なんか疑問文ばっかりやねw」

とツッコんでいた。

デート当日を迎える前から、すでに僕は少しおかしかった。

ランチ+水族館。デートプランが決まった

あーちゃんから返信が来た。

僕が提案した水族館に行ってみたいという。

しかも彼女も、その水族館は初めてらしい。

いいじゃないか。

55歳にして人生初の水族館デート。

「人生を上書きする」という今回のテーマにも、なんとなく合っている。

待ち合わせは午前中。

まずランチ。

そのあと水族館。

そして5時間。

デートプランだけ見れば、なかなか立派である。

あーちゃんからは、

「メッセージから優しい人だと伝わってきて、会うのが楽しみ」

という趣旨のことも言ってもらった。

これは嬉しかった。

もちろん、レンタル彼女というサービスの中でのやり取りだ。

そこを勘違いしてはいけない。

でも、嬉しいものは嬉しい。

55歳のおじさんは、その一文だけでちょっと浮かれた。

ちなみに、今の僕なら初回デートに水族館は選ばない。

水族館と映画館は、初回デートには向いていない。

理由は単純。

せっかく会ったのに、話す時間が減るから。

映画館なんて2時間近く横に座っているのに、ほぼ会話ゼロ。

水族館も楽しいけれど、魚を見て歩く時間が中心になる。

初回は相手のことをまだ何も知らない。

だったら、ランチやカフェ、軽くお酒でも飲みながら、とにかく話した方がいい。

これは、このあと何度かデートするようになってから気づいた僕なりの結論だ。

でも、このときの僕はそんなことを知らない。

「水族館デート。めっちゃデートっぽいやん!」

くらいにしか思っていなかった。

55歳、初回デート。

また一つ、経験してから学ぶことになる。

デート前、僕は別方向にも暴走した

ただ、初デートまでに僕には一つ重大な懸念があった。

当日、彼女を見た瞬間に身体が反応したらどうする。

大事な初デートが開始3秒で台無しになりかねない。

そこで僕は、事前に慣れておくことにした。

何に?

彼女に。

プロフィール写真を見ながら妄想する。

待ち合わせ場所に小走りでやってくるあーちゃん。

デート服のあーちゃん。

そのうち現代の英知まで投入し、妄想を映像化して遊び始めた。

途中からはなぜか彼女を巨大化させ、都心を歩かせるという、もはやデートとは何の関係もない作品まで作り始める。

何をやっているんだ、55歳。

そして気づく。

今は動画だけじゃなく、Tシャツまで作れるの?

ポチ。

頻度については伏せておこう。

いや、やっぱり書く。

軽く1日3回。

大丈夫か、俺。

15年ぶりに「デートに着ていく服」を買った

さて。

デートといえば服である。

ここで重大な事実に気づいた。

僕、ここ15年くらい私服を買ってないぞ。

Tシャツなら何十枚もある。

これ?

違う。

これ?

違う。

……全部却下。

そこで頼ったのが、僕らの味方。

私服の制服、ユニクロ様である。

シャツとパンツをポチ。

インナーは自作の一番無難な黒Tシャツでいいや。

55歳の初デート。

狙うのはファッション上級者ではない。

減点されないおじさんだ。

デートの勝ちパターンは事前準備だ!

そして前日。

僕は実際にデートコースを下見した。

待ち合わせ場所を確認。

そこからランチの店まで歩く。

さらに水族館までの道順も確認。

よし、OK。

仕事でもここまでロケハンしない。

水族館のあと?

ホテルは……。

まずないな。

行きたいけど。

おしゃれなバーくらいはキープしておこう。

それにしても東京、暑いな!

こうして準備だけは完璧な55歳が完成した。

来た!かわいすぎる!

そして当日。

僕は待ち合わせ場所に15分前からいた。

思えば、マスクもつけたままだった。

そこへ、あーちゃんから連絡が入った。

どうやら電車でトラブルがあったらしい。

でも、その頃の僕には何かを考える余裕なんてなかった。

緊張していた。

そして――。

来た!

向こうから小走りで女性がやってくる。

デート前に作り上げた僕の妄想映像みたいなことは、もちろん起きていない。

でも、そんなことはどうでもよかった。

かわいい!

いや。

かわいすぎる!

そして黒髪。

さらさら。

なっが!

写真で見ていた女性が、本当に目の前にいる。

「ごめんなさい、お待たせしました」

あーちゃんが僕のところまでやってきた。

「ごめんなさい、お待たせしました。電車のトラブルで点検が長引いて……」

はきはきした、かわいい声。

遅れた理由を説明して、ちゃんと謝る。

えらい子ちゃん、大好き💓

いや、まだ会って30秒くらいである。

落ち着け、55歳。

まずは予約しているランチの店へ向かった。

外へ出る。

暑い。

すると、あーちゃんがおもむろに日傘を、

ぱさっ。

「ほんと暑いですねー」

北国の気候に慣れた僕には、この暑さは強烈だった。

溶けそうだ。

何が?

心が。

はいはい、僕が車道側ね

並んで歩く。

まず歩くスピードを合わせる。

そして僕は思った。

はいはい。僕が車道側ね。

55歳だ。

それくらいのデート作法は知っている。

ところが道が微妙に狭い。

しかも路駐がある。

右へ。

左へ。

また右へ。

ポジション取りであたふたする55歳。

たぶん、あーちゃんは何とも思っていない。

でも僕の頭の中では、

「女性を車道側にしてはいけない」

という謎のミッションが発動していた。

何を話したのかは、正直ほとんど覚えていない。

ただ、あーちゃんが僕の話をちゃんと聞いて、ものすごくよく笑ってくれたことだけは覚えている。

そういえば僕、

手つなぎも申し込んでいたんだった。

完全に忘れていた。

それくらい舞い上がっていた。

完璧な下見をしたのに、店に入れない

予定より少し早くランチの店に着いた。

よし。

昨日下見した僕としては完璧である。

ところが――。

「まだ開店前です。お時間になりましたら、またお越しください」

むむ。

想定外。

待つ場所もない。

仕方ないので、近くの商業施設へ逃げ込んだ。

デートだろうが何だろうが、

まず避暑である。

そこであーちゃんの服が気になった。

「その服、どこの?」

「○○だよ」

「へえ、かわいいね」

ここまではいい。

ブランドに疎い僕は、なぜかそこから自分の小銭入れの話を始めた。

そして本当に小銭入れを取り出す。

……。

会話の変換がおかしい。

あーちゃん、よく笑ってくれたな。

昼飲みってサイコーだね!

ようやく開店時間。

ランチは、あーちゃんおすすめのスペイン料理だった。

彼女はかなりお酒が飲めるらしい。

「昼飲みってサイコーだね!」

あーちゃんはワイン。

僕はビール。

乾杯!

スペイン料理なんだから、

「サルー!」

くらい言えばよかった。

もちろん、そんな洒落た言葉は完全に飛んでいた。

食事はコース。

僕はこれが好きだ。

メニューを見ながら、

「何にする?」

「どうする?」

と延々やるのが苦手なのだ。

最初から料理が決まっていれば、会話に集中できる。

この子、食べ方までいいなあ

食事が始まって、またあーちゃんの印象が変わった。

姿勢がいい。

背筋がすっと伸びている。

食べ方もきれい。

そして、本当においしそうに料理を食べる。

これ、いいなあ。

また一個、

この子、ここも好きだな💓

が増えた。

家族や学生時代の話も少し聞いた。

詳しくは書かないけれど、話し方や食事の所作を含めて、育ちの良さを感じた。

理想は3対7。現実は9対1

デートの会話って、僕の理想では、

僕3、女性7。

女性の話を聞いて、そこから話を広げる。

そのくらいがちょうどいいと思っていた。

ところがこの日の現実は――。

僕9、あーちゃん1。

しゃべりすぎやろ、俺。

でも、不思議と一人でしゃべっている感じがしない。

あーちゃんが話を拾う。

ちゃんと聞く。

そして、よく笑う。

すると僕は気持ちよくなって、またしゃべる。

そしてまた笑ってくれる。

理想3対7。現実9対1。

初デートで僕の理想論は、開始早々きれいに吹き飛んだ。

沈黙すると、僕の目を見る

そして、もう一つ。

会話がふっと途切れる瞬間がある。

初対面なのだから当然だ。

普通ならちょっと気まずくなって、水を飲んだり、料理を見たりするところだろう。

でも、あーちゃんは違った。

僕の目を見ている。

何かを話すわけでもない。

ただ、こっちを見ている。

おいおい。

やめてくれ。

55歳のおじさんは、こういうのに耐性がない。

会う前にはあれだけ好き勝手な妄想をしていたくせに、

実際に目の前にいる彼女に黙って見つめられると、何もできない。

そのとき僕は思った。

おいおい、マジ惚れすっぞ。

まだランチである。

水族館にすら着いていない。

そして僕はまだ、

申し込んでいた「手つなぎ」のことさえ忘れている。

このあと55歳の僕は、人生初の水族館デートへ向かう。

人生の上書きは、まだ始まったばかりだった。

続き:初デート後編|水族館と恋人つなぎ、その先の「また会いたい」

ここまでの体験をまとめて読む:
55歳、初めてのレンタル彼女|予約から2回目のデートまでの体験記まとめ

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