55歳、レンタル彼女と2回目のデート|夜景クルーズの先にした約束

夜景を望むホテルラウンジでカクテルを飲む二人の後ろ姿とクルーズ船のイラスト 出会い体験記

2回目のデートを前に、僕には反省があった。

初デートのランチでは、僕9:あーちゃん1。ほぼ僕の独演会だったのである。

それでも「また会いたい」と言ってくれた彼女と、2回目のデート。

だから今回は、密かに作戦を立てた。

――今日はあーちゃんの話を聞く。目標は僕5:あーちゃん5。いや、できれば僕4でもいい。

ホテルのラウンジでカクテルを飲み、夜は二人でクルーズへ。前回とは少し違う、ゆっくりした時間が始まった。

前回の初デート後編はこちら|恋人つなぎから「また会いたい」まで

カクテルを前に、今日は聞き役になる

ラウンジの席について、まずはひと息。

目の前にはカクテル。そして、2回目のデートで向かい合うあーちゃん。

初対面の緊張でしゃべり倒した前回とは違う。今日は落ち着いている。……少なくとも、本人はそのつもりだ。

僕が聞きたかったのは、彼女の恋愛観だった。

お相手を好きになるまでの時間について、思い切って聞いてみた。

聞き役になると決めたくせに、質問は初手から核心へ。聞き上手と質問攻めは、紙一重である。

あーちゃんは、誰かを急に好きになるというより、時間をかけて少しずつ気持ちが育つタイプだという。

なるほど。じわじわ、か。

初デートで一人勝手に舞い上がった僕は、そこでちょっとブレーキを踏んだ。

僕の気持ちだけ先に走っても、彼女の歩幅とは合わない。

――僕はまだ、彼女を知る入り口に立ったばかりなのだ。

彼女の「男前」な一面

ところが、次の話で僕が抱いていた「守ってあげたい女の子」のイメージはひっくり返った。

失恋した友人を元気づけようと飲み会を開いたあーちゃん。そこで男性たちに絡まれた友人を、彼女がかばったという。

自分が前に出て、友人を守ったのだ。

おいおい。

守ってあげたいと思っていた僕より、彼女のほうがよっぽど頼もしい。

無理して飲むのは心配だ。でも、友人を放っておけなかった彼女の気持ちには、胸を打たれた。

――あーちゃん、意外と男前やん。

かわいいだけじゃない。前回のデートでは見えなかった一面を、また一つ知った。

過去の恋の話を聞いて

昔の恋愛の話にもなった。

若いころの初恋。うまくいかなかった交際。相手の事情に振り回された経験。

いろいろあったんだな、と思う。

話してくれたことはうれしい。でも、それは僕が勝手に公開していい話ではない。

ここに書くのは、彼女が今、好きになるまでに時間がかかると言ったこと。そして、その言葉を聞いて僕が少し落ち着いたことだけにしておく。

レンタル彼女とのデートで、僕だけが勝手に先へ走っても仕方ない。

あーちゃんのペースがある。

僕には僕の、楽しいと思う気持ちがある。

それで、今夜は十分だ。

夜景クルーズへ

ラウンジを出て、次は夜のクルーズ。

デッキへ上がると、風が強い。

それでも、そんなことは気にならなかった。二人で夜景を見ているうちに、会話が途切れる。

沈黙が、思ったより長い。

前回の僕なら、何か話さなきゃと慌てていたはずだ。今日は少しだけ違う。この時間も悪くない。

とはいえ、ただ黙って終わるのも僕らしくない。

僕がリードして、二人でお決まりのタイタニックポーズ。

――やってしまった、55歳。

彼女の腰に手を添えた瞬間、思わず心の中で「細っ!」。夜景を見に来たはずが、またしても意識はあーちゃんに向いている。

初デートは魚よりあーちゃん。2回目は夜景よりあーちゃん。観光の楽しみ方として、相変わらず何かを間違えている。

彼女の「じわじわ」という言葉を思い出す。急いで答えを出さなくても、今この時間が楽しい。

しゃべりすぎた一回目。

聞きたくて、少し聞きすぎたかもしれない二回目。

……加減を覚えるのは、まだこれからだな。

そして、次の約束

僕は、気になっている温泉郷の話をした。

「日帰りだと、とんぼ返りだね」

返ってきた言葉は、僕の想像を軽く飛び越えた。

「泊まりで行こう!」

えっ、そっちから?

心の中でガッツポーズする55歳。さっき「じわじわ」と聞いたばかりなのに、もう舞い上がっている。

ただ、約束は約束。実際の予定や過ごし方は、彼女の希望とサービスのルールを確認しながら決めたい。

恋愛観を聞いたから、彼女の気持ちが全部分かったわけじゃない。

それでも、初デートより少しだけ、彼女を知れた気がする。

今回の作戦は成功したのか。少なくとも、僕9:あーちゃん1ではなかったはずだ。次はもっと彼女の話を聞けるだろうか。

夜景よりも、僕の頭に残ったのは「泊まりで行こう!」のひと言だった。

55歳。

人生を上書きする2回目のデート。次のページには、温泉郷が待っている――かもしれない。

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