55歳、レンタル彼女と初デート後編|恋人つなぎから「また会いたい」まで

出会い体験記

初めてのレンタル彼女とのデート。

ランチでは緊張のあまり、僕9:あーちゃん1くらいの勢いでしゃべり倒してしまった55歳。

それでも楽しい時間は続く。

次に向かうのは水族館。

予約するときは、

「水族館デート。めっちゃデートっぽいやん!」

くらいにしか考えていなかった。

このあと恋人つなぎをして、

日傘で失敗して、

魚よりあーちゃんを見て、

余計な一言で怒らせて、

二人で子供みたいにイルカショーではしゃぐことになる。

そして最後に、あーちゃんの口から思いがけない言葉が出た。

55歳、人生を上書きする初デート。

いよいよ後半戦です。

お会計はスマートに……できなかった

楽しかったランチも終了。

こういうとき、できる男なら彼女がお手洗いに行っている間に、

サッと会計を済ませておく。

そして何事もなかったような顔で、

「じゃ、行こっか」

これがスマートな大人の男というものだろう。

もちろん僕も、そのくらいは知っている。

知っているのだが――。

できなかった。

結局、あーちゃんと一緒にレジへ向かい、普通にお会計。

55歳。

まだまだ修行が足りない。

支払いを済ませて、二人で店を出る。

すると――。

ん?

あーちゃんが自然に僕の手をつないできた。

しかも。

普通の手つなぎじゃない。

指と指を絡ませる――

いきなり恋人つなぎ!

おいおい。

思わず聞いた。

「恋人つなぎだよ、いいの?」

すると、あーちゃん。

「ん? なんのこと?」

……ぐぅ。

そういうところだぞ。

ルールがどうとか、サービスだからとか、そんな空気を一切出さない。

ただ自然に手をつないでくる。

またこの子のいいところ、一つ見つけたよ💓

そして恋人つなぎのまま、僕たちは次の目的地へ向かった。

真夏の日傘でもスマートになれない55歳

外へ出れば、真夏の東京。

暑い。

とにかく暑い。

日差しが容赦なく照りつけて、肌がじりじり焼けていく。

すると、あーちゃん。

バッグから可愛い日傘を取り出して、

すっ。

ここは僕も男を見せるところだ。

「傘、持とうか?」

よし。

これはなかなかスマートなんじゃないか?

そう思ったのも束の間。

「んー、日差しが入ってくる」

……。

どうやら僕が持つと、微妙に角度が悪いらしい。

彼女を日差しから守るつもりが、

僕には日傘すらスマートにさせてくれない。

会計に続き、本日2敗目。

そんなこんなで、ようやく水族館に到着。

ここでは抜かりはない。

事前に準備していた館内MAPを、

すっ。

あーちゃんに渡す。

どうだ。

今度こそスマートだろ。

そして館内へ。

「はあー、涼しいね!」

……うん。

もう、それだけで幸せ。

魚より見ていたもの

館内には家族連れ、カップル、インバウンド。

とにかく大勢の人、人、人。

その中に、

50代と20代のカップルもどき。

うん。

これだけ人がいれば、僕たちもいい感じに紛れている……はずだ。

ふと、どうでもいいことが気になった。

「もし知り合いに会ったらどうするの?」

あーちゃんは即答。

「そんなの会わないよ!」

……そりゃそうだ。

我ながら、なんでそんなこと聞いたんだ。

クマノミ、エンゼルフィッシュ。

水槽の中には色とりどりの魚たちが泳いでいる。

本来なら、それを見るために来た水族館。

でも僕が見ていたのは――

魚じゃなかった。

水槽にへばりつくようにして、じーっと魚を見ているあーちゃん。

本当に楽しそう。

その姿を、

僕はずっと見ていた。

魚を見るあーちゃんを見る55歳。

水族館の楽しみ方として正しいのかは知らない。

でも、僕にとっては魚よりそっちだった。

好きな色を聞いただけなのに怒らせた

少し進むと、ブラックライトに照らされた幻想的な空間。

「ユウくん、ここで踊れるんじゃない?」

からかうような、あーちゃん。

……うん。

その昔はね。

そんなことを言いながら歩いていると、周りは青やピンク、紫と色とりどり。

僕は何気なく聞いた。

「あーちゃん、好きな色は?」

「紫!」

そこで僕の口から出たのが、

「……欲求不満だね!」

……。

やってもうた。

あーちゃんの表情が変わった。

この日、初めてはっきり分かった。

怒ってる。

「そんな話は迷信だよ」

慌てて取り繕う55歳。

いや、

言った本人が迷信って言うな。

なんとかなだめた……と思う。

恋人つなぎまでしてもらって、

魚を見る横顔に見とれて、

完全に調子に乗っていた僕。

距離が縮まったからといって、何を言ってもいいわけではない。

55歳。

水族館でひとつ勉強しました。

水族館って初デートにいいかもしれない

実際に二人で歩いてみると、水族館って思っていたよりデートに向いている。

魚を見ながら話して、

ちょっと黙って、

また話す。

ずっと向かい合って会話するわけじゃないから、沈黙もそんなに気にならない。

水槽を一緒にのぞき込めば、自然と二人の距離も近くなる。

適度に会話して、適度に二人の距離感を楽しめる。

僕の緊張も、この頃にはだいぶ解けてきていた。

そして、いよいよ水族館のメインイベント。

イルカショー。

55歳、イルカショーではしゃぐ

混んでるだろうな。

場所取り大変かな。

そんな心配をしていたけれど、思いのほかいい時間に会場へ到着。

しかも、

水のかからない席を無事確保。

ここ重要。

初デートでびしょ濡れになる勇気は、まだ僕にはない。

ドリンクも調達して準備万端。

ショーが始まった。

イルカが飛ぶ。

僕たちも、

パチパチパチ!

また飛ぶ。

パチパチパチ!

笑う。

また拍手する。

気づけば二人とも、子供みたいにはしゃいでいた。

目の前ではイルカたちが次々とジャンプ。

まるでサーカスのようなアトラクション。

そして何よりすごいのが、飼育員さんとイルカたち。

合図ひとつで動き、

一緒に泳ぎ、

またジャンプ。

息ぴったり。

それを見ながら僕は思った。

イルカと飼育員さんもいいけど――

僕は、あーちゃんと、息ぴったりになりたいよ。

……まだ初デートだけどね。

夢のような5時間。そして――

イルカショーも終わり、水族館をあとにする。

気づけば、あれだけ長いと思っていた5時間がもう終わろうとしていた。

予約したときは、

「初対面で5時間って、長すぎないか?」

と思っていたのに。

終わってみれば、

あっという間だった。

楽しい時間って、本当に早い。

そして、いよいよお別れの時間。

僕には、どうしても聞いておきたいことがあった。

「また会えるかな?」

ちょっとドキドキしながら聞く。

すると、あーちゃん。

「え?ユウ君がいいなら 私、定期的に会いたいけど……」

……。

え?

定期的に?

会いたい?

僕と?

心の中で、

ガッツポーズ!!

もちろん分かっている。

彼女はレンタル彼女。

これは仕事だ。

営業スマイルかもしれない。

営業トークかもしれない。

それでも、うれしいものはうれしい。

55歳にもなると、

若い女性から「定期的に会いたい」なんて言われる機会は、そうそうない。

だったら今日は、

素直に喜んでおこう。

そしてその場で、

来月、また会う約束をした。

人生を上書きする最初のデートが終わった

初めてのレンタル彼女。

勢いで予約してしまった5時間。

会う前は不安だらけだった。

会計はスマートにできない。

日傘もうまくさせない。

調子に乗って怒らせる。

それでも、

手をつないで、

一緒に笑って、

子供みたいにイルカショーではしゃいだ。

そして最後には、

「また会いたい」

と思える人ができた。

55歳。

人生を上書きする最初のデートは、

こうして終わった。

でも――

あーちゃんとの時間は、まだ始まったばかりだった。

続き:あーちゃんとの2回目のデート|カクテルと夜景クルーズの夜

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