人との出会いで、人生が変わる。
そんな言葉を聞くたびに、以前の僕なら「いい出会いがあればね」と思っていたかもしれない。
でも、今は少し違う。
人生は、自分で動いて変える。
でーちゃんと会った日は、そのことをもう一度考えた日だった。
大雨の中、やってきた彼女
この日の待ち合わせは、個室のイタリアン。
外は大雨だった。せっかくの初対面なのに、なかなかの歓迎ぶりである。
現れたでーちゃんは、慌ただしい毎日を送っているらしい。実習が忙しくて、髪を整える時間もあまりなかったという。
「そのまま来ちゃった」
そんなふうに話す彼女は、飾った感じがしない。
こちらは初対面に向けて、服や店や会話まで考える55歳。向こうは大雨と忙しい一日の中から、そのまま飛び込んできた。
なんだか、彼女らしい気がした。
もちろん、会って数分で「らしい」も何もないのだが。
僕が質問する前に、話が広がっていく
席に着くと、でーちゃんは自分からどんどん話してくれた。
学生時代は、今とは雰囲気がかなり違ったらしい。仕事を選び直したこともある。美容への関心も強く、これからやってみたいことを楽しそうに話す。
話題が次々に飛ぶ。
僕は聞いていて飽きない。ただ、今日は彼女の恋愛観も聞いてみたかった。
「それで、恋愛のほうは?」
頃合いを見て戻してみる。
ところが、そこからまた別の話へ。
おっと、舵を切りすぎたか。
以前のデートで自分ばかりしゃべった反省から、今日は聞き役になろうとしている僕。それでも、聞きたい話に誘導しようとすると、案外ぎこちない。
聞き上手への道は、まだ長い。
恋の話から見えたもの
これまでの恋愛では、相手のほうから積極的に来ることが多かったという。
でも、付き合い始めると、相手の熱が急に冷めてしまうこともあったらしい。
それは、寂しいよな。
僕はそう思った。ただ、初めて会った僕が彼女の過去を簡単に分かった顔で語るのも違う。
「それはつらかったね」と決めつけるより、まずは彼女の言葉を聞くことにした。
明るく話している人にも、そこに至るまでの出来事がある。
でーちゃんにも、いろいろあったのだと思う。
出会いは、きっかけにすぎない
雨は相変わらず強かった。
個室で食事をしながら、仕事、美容、昔の自分、これからのこと。でーちゃんの話を聞いているうちに、時間が過ぎていった。
会う前の僕は、どんな女性だろうと考えていた。
会ったあとの僕に残ったのは、一人の人間には、短いプロフィールに収まらない話があるという当たり前のことだった。
人との出会いで人生が変わる。
いや、正確には、出会ったあとで自分がどう動くかで変わるのだろう。
55歳の僕は、こうして新しい出会いに足を運んだ。でーちゃんも、自分のこれからに向かって動いている。
大雨の日のイタリアン。
でーちゃんは、僕が自分の人生を変えていく中で出会った一人になった。
その後の2回目のデートはこちら。
55歳、でーちゃんとの2回目のデート|お寿司の後にまさかの展開

